馬車道法律事務所 Topics
2009.2.5  オンライン請求義務不存在確認訴訟について

 

弁護士 大野美樹

 2009年1月21日、全国の医師・歯科医師ら961名が、国を被告として診療報酬のオンライン請求義務化を争い、横浜地方裁判所に提訴しました。この訴訟は、マスコミ各社でも大きく報道され、提訴後、新聞等に市民の皆さんから意見もよせられています。

 ところで、診療報酬のオンライン請求とはそもそも何?と思われるかもしれません。これまで、保険医療機関(医師・歯科医師ら)は、診療報酬(簡単にいうと、医師らがもらう医療費)の請求を手書きの紙又は電子媒体を提出することにより行っていました。ところが、厚生労働省令の改正(平成18年厚生労働省令第111号)により、2008年4月から段階的に、2011年4月から原則的に、全ての医療機関において、請求方法がオンラインに限定されることになったのです(オンライン請求の義務化)。

 では、オンライン請求の義務化によりどんな問題が生じるのでしょうか?

 まず、オンライン請求に対応できない(又は危険性を考えてオンライン請求を行わない)医師・歯科医師が辞めてしまうことです。アンケート結果によれば、医療機関のうち、医科の12.2%、歯科の7.2%が「開業医を辞める」と回答しています。今日、医師不足が叫ばれる中、オンライン請求の義務化は、地域医療の崩壊に拍車をかけるものと言わざるを得ません。

 次に、患者のプライバシー権が危険にさらされるおそれがあります。診療報酬請求の際に添付されるレセプトには、氏名、性別、生年月日、病名、受けた診療や検査内容等、センシティブな情報が記載されています。インターネットを介した情報漏洩事件が発生していることは、ご承知の通りですが、診療報酬のオンライン請求で情報漏洩が発生した場合、患者が被る被害は甚大なものになることが予想されます。

 このように、オンライン請求の義務化は、地域医療の崩壊に拍車をかけるものであり、患者のプライバシー権侵害の危険もあります。医師・歯科医師の立場からすれば、営業の自由を侵害するものでもあり、さらに、このようなオンライン請求の義務化を単なる省令改正で行っている点も違憲です。その他、オンライン請求の導入にあたって必要経費の補助が一切なされないなど、他にもたくさんの問題点があります。

 医師・歯科医師らが従来の方法でも診療報酬の請求をしうるという当然の権利を守るため、そして地域医療の崩壊を防ぐためにも、原告及び弁護団が一丸となって、オンライン請求の義務がないことの確認を国に求めていきます。