弁護士小賀坂徹です。
8月24日、チャーリー・ワッツが死んだ。ローリング・ストーンズのオリジナルメンバーでドラマー。
荒々しいメンバー揃いのストーンズの中で、一人銀行員のような佇まいで淡々とドラムを叩いていたのが印象的だった。
すでにベースのビル・ワイマンはかなり前に脱退しているから、これでオリジナルのリズム隊はいなくなってしまった。
ストーンズは新たにドラマーを入れるのか、それともライヴやレコーディングの時だけサポートメンバーを入れて活動するのかは定かでないが、ビル・ワイマンの時のように後者を選択するのではないだろうか。
ストーンズ自身は、すでに伝統芸能(=様式美)というべき域に達しているので、ミック・ジャガーとキース・リチャーズさえいればストーンズであり続けることはできるだろうが、あのメンバーの中で格別の存在感を保っていたチャーリー・ワッツがもういないと思うと、やはり寂しい。
最近のストーンズで思い出すのは、昨年の医療従事者支援のためのチャリティーコンサート『One World: Together At Home』で、それぞれのメンバーの自宅で演奏し、リモートでセッションした時の事だ。
この時演奏した曲は「You can’t always get what you want」(いつも欲しいものが手に入るとは限らない)。
それぞれのメンバーの自宅は、「ザ金持ち」という感じだったが、その時チャーリー・ワッツはドラムセットの代わりにトランクや機材ケースをいくつも並べ、
またソファーのひじ掛けなんかを叩いていた(彼は以前のインタビューで自宅にドラムセットは置いてないといっていた)。
このライヴは発起人のレディー・ガガを始めとするそうそうたるメンバーが揃っていたが、80歳近いストーンズが一番楽しそうで、見ているだけでときめいた(キースはロックグラスを傍らに置いていてミスタッチばかりだったのもストーンズらしい)。
この曲、邦題は「無情の世界」とされているけど、その最後の歌詞は、
But if you try sometimes you just might find.
You get what you need.
(でもトライしつづければ、いつか気づくと欲しいものが手に入ることもあるのさ)
という希望で結ばれている。
コロナ禍のチャリティライブの選曲としてはかなりイケてたし、さっきも言った通りパフォーマンスもカッコよかったので何回もリピートしてしまっていた。
そしてその2日後の26日、随分とお世話になった川崎合同の篠原義仁弁護士が本当に唐突に逝ってしまった。
We can’t always get what we need.
(自由法曹団通信に掲載されたものに加筆、変更)