2020年02月
2020年2月13日

映画評

弁護士小賀坂徹です。

パラサイト-半地下の家族」がアカデミー賞作品賞を受賞するという快挙がありましたが、確かに面白かった。

そこで今年に入って観た6本の映画についての感想を簡単に述べてみます。。

ジョジョラビット

少年は教育(洗脳)によっていとも簡単に偏狭なレイシストになり、現実に直面することで共感や共生、そして恋を知る。

偏見や差別は無知によってもたらされることを、実に軽妙に(コメディタッチ)で描かれており、こうしう視点でナチスや戦争を扱うのは秀逸。

昔のことでなく、まさに現代の課題を突きつけている。

差別と分断でなく、共生と共感を。ここからそういうメッセージを読み取るのは決して深読みではないと思う。

その意味でフレディみかこの傑作エッセイ『ボクはイエローでブラックで、ちょっとブルー』と通底するものがある。

この本も抜群に面白くお勧めです。

また、この種の作品にスカーレット・ヨハンソンがキャスティングされているところにアメリカ映画の奥深さを感じる。

彼女の演技もすごくよかった。

僕が見たときは直前に『ブラックウィドウ』の予告をしていて笑えた。

オープニングにビートルズの「抱きしめたい」のドイツ語版、エンディングにデビットボウイなどサントラもいい。

僕としてはイチオシです。

パラサイト-半地下の家族

もう説明の必要はないでしょう。

貧困と格差が人の気持ちを歪めていき、僅かなきっかけで凄惨な事件の引き金となる。

重いテーマを扱っているのに大ヒットしたのは、ストーリー展開の巧みさと貧困側の人々がどこか魅力的に描いているせいだと思う。

このあたりがこの後紹介する『家族を想うとき』とかなり違うところ。

アカデミー賞受賞によって、当分ブームは続くだろう。

家族を想うとき

原題のSorry We Missed Youの方がピンとくる。

自営とは名ばかりのロンドンの運送業者。朝から晩まで労働を強要され、事故等があれば全部自己負担。

日本では偽装請負と呼ばれるが、本来労働法制の保護を受けるべき対象者が姑息なやり方でそこから離脱させられ、時間規制も賃金規制も受けられない。

その中で人間が壊れ、家族が壊れていく。誰もが皆家族を想い、誰も悪くないにもかかわらず、社会の仕組みが家族を根底から壊していく。

最後まで1ミリも救いのない作品だが、それだけにあまりにリアルに現実が胸に迫ってくる。

非正規や偽装請負の問題が我が国固有の問題でなく、現代資本主義のもたらす普遍的な問題であることを改めて確認させられる。

誰もが愛しいチャンピオン

スペイン映画。

心ならずも障害者バスケットチームのコーチにされた主人公と障害者たちの物語。

そういう意味ではベタなストーリーではあるものの、惹きつけられるのは、障害者たちが怠け者でスケベでだらしなくて、

でも懸命に生きてるというまさにありのままの人間として描かれているからだ。

このあたりが24時間テレビの感動の方程式と真逆で、共生ということを考えるのはこうしたやり方でなければならないということを強く意識させる。

佳作です。

i-新聞記者ドキュメント-』

東京新聞の望月衣塑子記者をモデルとした松坂桃李主演の「新聞記者」も面白かったが、こっちはフィクションでなく本物のドキュメンタリー。

だから望月記者以上に菅官房長官が映る場面が多い(笑)。

現政権の異様なメディア対応と、メディア側がまるで毅然とできない状況がリアルだ。

忖度はメディアにある。

それにしても望月記者のパワフルさには驚く。

2人の小さな子どもを抱えつつ、時には身の危険も顧みず取材を続ける姿は神々しくもある。

フォードvs.フェラーリ

特になんということのないストーリーだけど、長さを忘れて引き込まれる。

マッドデイモンとクリスチャンベイルがいいんだわ。

企業の論理と男のロマン的なものが対立し、カタルシスで終わると思いきや…。

良質なハリウッド映画です。