弁護士 黒澤知弘です。

 

10月30日(日)に、福島県から原発事故によって避難している方々の裁判について、

私が解説をおこないます。

 

興味がございましたら、ぜひ、お越し下さい。

 

「ふくかな総会」と「福島の実相と闘いを聞く集い」

10月30日(日) 午後1時15分開場、午後1時30分~午後5時00分

会場:かながわ県民センター2階ホール(横浜駅西口徒歩5分)

 

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2016年9月20日

シング・ストリート

弁護士 小賀坂徹です。

 

夏休みに結構まとめて映画をみた。

ハリウッドや日本映画の大作に興味がないわけでは全くないが、この夏みたいと思ったのは「シン・ゴジラ」だけだったので、シネコンではほとんど上映していない作品を中心にみたのだが、思いのほか面白い映画に出会えたので簡単に紹介してみる。 

 (一部ネタバレがあります。)

 

シング・ストリート 未来へのうた

1980年代半ば、アイルランド、ダブリンの高校生(主人公)がバンドを結成し、成長していく、そういう意味ではベタな青春ストーリー。

でも理屈抜きに心を奪われる。無条件のトキメキと高揚感。サイコー。

 

音楽も効果的で、デュラン・デュラン、ホール&オーツ、クラッシュ、ジャムなど当時の懐かしい音楽だけでなく、

主人公のバンドの演奏するオリジナルの楽曲も素晴らしい出来栄え。ボクにとっては、ここ数年でナンバーワンの映画だった。

 

権威に対する抗い、切ない恋、家族との葛藤といった「これならバンドやるしかないっしょ」という要素を余すところなく描きつつ、それらを極めて良質に昇華させていく巧みさは見事。曲がりなりにもバンドをやってきた身としては、心躍らないわけにはいかないのだ。

 

ラストの主人公が彼女と小さなモーターボートに乗ってイギリス(ウェールズ)に渡ろうとするところは、「小さな恋のメロディ」のラストのトロッコのシーンを想起させる。

ただ「小さな恋のメロディ」のトロッコが大人社会からの逃避をイメージさせたのと違って、本作のモーターボートは明確な目標に向かう航海そのものであり、

それ故に荒天の海に象徴される多くの困難とその反面の力強い希望を意識させ、胸が熱くなる。

希望だけを胸に抱いた大胆で無謀な挑戦。こんな生き方をずっと貫いていきたい。

 

あまりによかったので3回も観てしまった。最初は一人で、あと2回は子どもたちと。。

またバンドやりたくなった。

 

 

セトウツミ

最初から最後まで大阪の高校生瀬戸(池松壮亮)と内海(菅田将暉)が、ずっとしゃべってるだけで、一切何も起こらない映画。

「ケンカもしない。部活もしない。壁ドンもない」というキャッチコピーどおり。

それでいて終始笑えて、少し切なくていとおしくて引き込まれる。監督と俳優の力量なんだろうな。

佳作というより傑作。ホント面白い。これももう1度みたい映画だ。

 

 

帰ってきたヒトラー

あのアドルフ・ヒトラーがタイムスリップして、現代のドイツに現れるというお話し。

本物のヒトラーだがもちろん誰もそれを信じるわけはなく、最初は完成度の高いモノマネ芸人として一種のキワモノとしての人気を博し、視聴率を取りたいテレビ局の思惑から多数の番組に出演する。

しかし、彼は新聞スタンドに寝泊まりしながら新聞を読み漁り、あっという間に現代の政治課題を学習してしまう。

そして、テレビに出演した際、例の早口でまくしたてながら徹底的に相手をこき下ろしていく手法で、次第に現代の国民の心を捉えていく。

この描き方がリアルで秀逸だ。

また、現在のネオナチの幹部に「お前らのやり方は生ぬるく、なっていない」と説教を垂れるところなどは、ブラック過ぎて笑えない。

 

かくのごとく大衆は危うく、今でも簡単に衆愚政治に陥る(あるいはすでに陥っている?)ことをこれでもかと描いてみせる。

 

これをみて、この国の今の首相というより、前の大阪市長を強烈に思い出した。彼の政治手法はまったくここに描かれたとおりで、本当に彼はヒトラーに学んだのではないかと思った。

 

ラストにドイツのトルコ人移民排斥のデモのリアルな映像とヒトラーの顔がダブって写し出されるが、マジでゾクッとする。

歴史は繰り返してはならないが、繰り返さないとも限らない。今の私たちにその知恵は備わっているのか。そのことが問われている。

 

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

 「ローマの休日」などの脚本家で共産党員でもあったダルトン・トランボの半生を描いた実話。

ハリウッドの赤狩りでずたずたにされ、超売れっ子脚本家でありながら本名で書くことさえできなくなった状態から、復活を遂げるストーリー。

 

映画人として、映画で得られた富を映画作りを支えている労働者にも公平に分配せよと当然の要求をすることがソ連のスパイだとされ、ハリウッドから追放されていく。

共産党員であろうと民主党員であろうと関係なく、仲間を売らないとスパイ一味とみなされ追放される、そのことを避けるため嘘をついてまで仲間を売ってしまう恐ろしさ。

それはさながら魔女狩りの様相で、特異な記者やジョン・ウェインなどの俳優がメディアも駆使しながら攻撃を強め、議会がさらに追い打ちをかける(「マッカーシズム」のかのジョセフ・マッカーシー上院議院も登場する)。

僅か50年ほど前に「民主主義の国」アメリカで、表現者が集うハリウッドで、実際に起きたことだと思うと震撼とする。

 

結局トランボを救ったのは、自身の信念と不屈の闘志に加え、圧倒的な筆力というか才能だった。

エンターティナーとして大衆の心を捉える才能が、最終的にはトランボを表舞台に押し上げた。でも逆にいえば、それほどの天才でも簡単に弾圧され追放されてしまうということなのだ。

 

トランボを救ったのが、カーク・ダグラスの「スパルタカス」という作品だったのは驚きだった。みていない映画だけど、機会があればみてみたいと思う。

 

シン・ゴジラ

ゴジラ世代(といっても核実験をテーマとした第1作でなく、ゴジラが地球の英雄としてキングギドラなどの宇宙怪獣と戦うシリーズ。夏休みのたびに夢中で見に行っていた)のノスタルジーからみようと思った映画。自衛隊があまりに前面に出てくるところが鼻についたが、面白かった。

解説や評論の類を一切みてないので、作者がどのような意図で作ったのかを知る術はないが、「災害」の発生に右往左往し、延々と繰り返される会議のシーンからは「3.11」を想起する人が多かったのではないだろうか。ボクはずっとそうだった。

 

結局、解決策を示しえたのは学者も官僚も政治家も異端者だけで作られたチームであり、最後の決め手が貧乏くじを引かされて臨時総理となったまったく冴えなく描かれた政治家の交渉力だったところは、少しばかりあの震災にかかわった身としてはカタルシスを感じた。特に総理大臣が「御用学者じゃどうにもならん」と嘆くシーンは痛快そのもの。

 

そしてゴジラは、まぎれもなくF1(エフイチ・福島第1原発)なのだろう。

東京駅の真ん中で冷温停止したまま動かないゴジラの姿は、「アンダーコントロール」とはほど遠く、事態は何も終わっていないことを物語っている。これは深読みなのか。

 

栄光のランナー 1936ベルリン」。

みたかったけど、見逃してしまった映画。

これはナチス・ドイツ時代のベルリンオリンピックに出場した黒人アスリート、ジェシー・オーエンスの物語。

彼は陸上種目で4冠を獲得し、ゲルマン民族(白人種)の優位性を示そうとしたヒトラーの思惑を打ち破ったヒーローだった。

今年のリオオリンピックでルノー・ラビレニ(フランス)が棒高跳びの試技のたびにブラジルの観客からブーイングを浴びた際、ベルリンオリンピックの時のオーエンスに対する観客の態度を引き合いに出して抗議してたから、とてもタイムリーだったと思う。

 

「帰ってきたヒトラー」「トランボ」そして「栄光のランナー」がほぼ同時期に作成されたことに、やはり意味を感じざるを得ない。

暗い時代に向かう予感がしているのは日本だけに限られず、そしてそれに抗う動きも世界で起きているのだ。

 

2016年8月31日

がんばれ!NHK

弁護士 小賀坂徹です。

 

昨日書いたバリバラの『検証! 障害者×感動の方程式』は、9月2日0時(1日24時)に再放送が決まったようだ。

ネットでもまだ観れると思うけど、見逃した方はこちらもどうぞ。

 

さて、NHKもなかなかやるなと思ったところだが、さらにそれより前の8月26日に放映された「解説スタジアム」も評判になっている。

 

テーマは『どこに向かう 日本の原子力政策』で、7名の解説委員が原発再稼働、核燃料サイクルなどについて議論をした内容だ。

 

こに向かう 日本の原子力政策

(クリックすると別ウインドウが開きます。)

 

NHKは、特に籾井会長就任後、政府のプロパガンダに特化した様相を色濃く呈していて、解説委員もその一員としか思えなかった。

実際、東京オリンピック問題を扱った番組でも、解説委員は「オリンピック開催の第1の目的は『国威発揚』」といっていたくらいだし。

 

でも「解説スタジアム」の7名の解説委員は、現在の政府の原子力政策について、

取材に基づく確かな情報と豊富な知識をもとに、実に整然と説得的に議論を展開し、政府の原発政策を正面から批判している。

「政治論」でなく、確かな知見をもとに語られる内容に、いちいち頷かされるのである。

原発問題を考えるうえで、必見の番組といえるのではないだろうか。

 

「バリバラ」といい「解説スタジアム」といい、ジャーナリズム精神に溢れた番組がNHKで制作されていることは、この上なく心強い。

 

もしかしたら、内部では様々な批判があるかもしれないし、今のNHKでこうした番組を作ることは勇気のいることかもしれない。

 

だからこそ、こういた良質の番組にボクらちゃんと拍手をおくることがとても大事だ。

 

この2つの番組はジャーナリズムの本質を改めて教えてくれたように思う。

これからもこんな番組を期待したい。